F1の安全性について、あらためて考えさせられるグランプリとなりました。
昨日行われたF1バーレーンGP。
F1マシンが真っ二つに切断され、クラッシュと同時に炎上するという近年では見たことが無いシーンを目撃し、ショックを受けた方も多かったのではないでしょうか。
幸い、ドライバーのロメイン・グロージャンはすぐに自力でマシンから脱出。
両手に火傷を負ったものの骨折などもなく軽症で済んだことは、すでに多くの情報サイトやニュースなどでも取り上げられている通りです。
その他にも、ランス・ストロールのマシンが横転する大クラッシュや、消火器を持ったマーシャルがコースを横切るなど、一歩間違えれば大惨事となる出来事が多く発生した今回のバーレーンGP。
ここからまた、多くを学びさらなる安全性向上に向けて対策を打つ必要があります。
なので少し深堀して、昨日の事故を見ていきたいと思います。
ヘイローが命を守ったのは事実。でも100%ではない
We are so thankful that Romain Grosjean was able to walk away from this. We did not need a reminder of the bravery and brilliance of our drivers, marshals, and medical teams, nor of the advances in safety in our sport, but we truly got one today#BahrainGP 🇧🇭 #F1 pic.twitter.com/z8OeTU5Nem
— Formula 1 (@F1) November 29, 2020
こちらが事故直後に駆けつけたメディカルカーの2人の勇気ある消火活動の中、脱出するグロージャンの動画です。
クラッシュした角度が悪かったためか、信じられないことにガードレールの隙間にモノコックが突き刺さり、その衝撃を吸収した車体後部半分が吹き飛び、そこから漏れた燃料に引火したと想像されます。
ヘイローが無ければ、ガードレールに頭部が直撃し即死に近い状態だったでしょう。
なのでヘイローがグロージャンの命を守ったのは事実で、見た目の悪さにも関わらずに安全を追及し導入に踏み切った関係者には感謝と敬意を表したいですね。
しかし、無事に自力脱出までして一切犠牲者が出なかったのは、以下のような数々の奇跡が重なり起きた、不幸中の幸いでしかないと思います。
- 少しでもズレていたら、支柱や破片がヘイローをすり抜け頭部を直撃していた
- コクピットを塞ぐ形でストップしていたら、脱出できず炎に包まれていた
- クラッシュ場所が、たまたま消化地点のすぐ近くだった
- スタート直後だったので、メディカルカーがすぐに到着した
- もしガードレール付近にマーシャルがいたら、巻き込まれていたかもしれない
『ヘイローがあったからグロージャンの命が守られた』のは事実です。
しかし『ヘイローがあるから安全で大丈夫』ではないということをあらためて認識しておきたいです。
そしてなぜ火が出ることになったのか、これも追及する必要があります。
ロス・ブラウンはじめFIAがすでに表明してくれていますが、ここから学べることは多いはずです、さらなる安全対策を実施していってもらいたいと強く思います。
事故原因は『前車の楽観的な進路変更』では?
A heart-stopping moment on Lap 1 in Bahrain
We are all incredibly grateful that @RGrosjean walked away from this incident#BahrainGP 🇧🇭 #F1 pic.twitter.com/6ZztuxOLhw
— Formula 1 (@F1) November 29, 2020
今回の事故の原因ですが、『前を走るマシンが、後方を確認しないで進路を大きく変更した』ことにより発生したクラッシュではないかと思っています。
もし巻き込まれた側のクビアトがこのクラッシュに遭っていたら、今頃はグロージャンには非難が集中していたのではないかと思います。
またレース再開直後に発生した、こちらのストロールの横転事故。
なぜかペナルティがクビアトに出てしまいましたが、こちらも前を走るストロールが後方確認せずにコーナーのエイペックスに切り込んでいったことが原因ではないでしょうか。
グロージャンやストロールを責めているわけではなく、レースで、特に1周目ではこういうレーシングアクシデントに近いことが起こり得るのは仕方ないことです。
ただ、それを発生しにくくする余地はまだあるのではないでしょうか。
例えば後方視界をさらにクリアにするために、ミラーを大きくしたり、取付位置を改良したり。
例えば前の車に後方確認義務を設けるルールで、接触時には前の車の方がペナルティを受けるという一貫性を持たせたり。
マシン改良やレギュレーションで改善余地がまだまだあると思うので、今回の事故からFIAにはさらなる改善を期待したいと思います。
マーシャルの安全についても対策を
レース終盤、セルジオ・ペレスのエンジンから煙が上がりストップしてしまいました。
その消火活動のためにコースを横切り急ぎストップしたマシンに向かうマーシャルの姿と、その奥からF1マシンが迫ってくる様子が解ると思います。
伝えられている情報によると、コースを横切ってはいけないルールは徹底されているものの、レース前半でグロージャンの事故の火を見たマーシャルが咄嗟の判断でこのような行動に出たとか。
このマーシャルの方の勇気と正義感とを責める気にはなれません。
しかし過去にはコースを横切るマーシャルがF1マシンと衝突し、消火器がドライバーの頭部を直撃し二人とも死亡するという悲しい事故も発生しています。
なので、やはり起きてはいけない事件です。
以前こちらの記事でも書きましたが、今年はイモラやトルコでマーシャルの命も危険にさらすような出来事が多発しています。
FIAには、マーシャルの命も守るための厳格なルール徹底と安全対策を期待したいと思います。
F1は生命の危機と隣り合わせのスポーツ
心で理解しつつも、ついこのことを忘れてしまいがちです。
今回のグロージャンの事故からの生還は、これまでのFIAやF1関係者の安全対策への努力の賜物だと思うので、あらためて感謝と敬意を表したいです。
しかし見てきた通り、今回のグランプリから学ぶところも多々ありました。
F1に限らずモータースポーツでは、事故が発生することは避けられない事実です。
でもそのリスクを限りなく小さくしていくことはできます。
安全対策には終わりがないと思うので、FIAにはしっかりとさらなる安全対策やルール厳格化を期待したいと思います。
観ている我々ファンも、『ドライバーやマーシャルの安全が第一』ということを忘れないで、これからもF1を楽しんでいきたいと思います!
以上、F1バーレーンGPの事故についてでした。